コントラバスと言えばオーケストラと答える方が多いかもしれませんが、他にもジャズ・吹奏楽・タンゴなど多くのジャンルで活躍します。
それぞれのジャンルや編成によって重要度やおいしさが変わってくるのですが、ジャズは3人編成のトリオでもコントラバスが入るくらい重要ですし、タンゴも現地では入ります。
オーケストラは大勢の中にコントラバスも6人くらいいます。
しかし吹奏楽は大勢の中に1人とか、いないバンドもあったりします。
たしかに”吹いて奏でる楽器”ではないので、よそ者というかおまけというか、良く言えば特殊管楽器扱いというかそんな感じは否定できません。
でもだからといって適当な仕事をしてたらいいかといったらそれは違います!!
うどんに百均で買ってきた七味をかけるのと、阪急百貨店で買ってきた七味をかけるのとどっちが美味しそうですか?
粉末のほんだしでつくった出汁と、昆布やかつお節からとった出汁とどっちがいい味・いい香りがしますか?
割り箸で食べるのと、なんかいい感じの箸で食べるのと…
コントラバスは主役ではありませんが、それくらい大事な役割をもっているのです!!
私の吹奏楽歴
多くを語る前に、私の吹奏楽歴を少し説明しておきます。
私は高校の時に吹奏楽部に入りコントラバスをはじめました。
クラブに力を入れている高校で、テスト期間以外は毎日弾いていました。
そしてそのまま音大へと進み、卒業後は数年間NPO法人の吹奏楽団に所属していました。
そこでは定期演奏会をはじめ、世界吹奏楽大会(WASBE)に出演したり、数多くのレコーディングをしたり、また著名な作曲家の指揮による自作自演など多くの経験をしました。
そしてその楽団は辞めた今でも、中高の吹奏楽部へコンクール前などにはレッスンによくいっています。
音大で学んだことや、その後の吹奏楽団での経験をもとに中高の吹奏楽部ではレッスンをするのですが、吹奏楽におけるコントラバスについていつも必ず伝えることがあります。
レッスンで大事にしていること
それは、
「コントラバスの役割は、低音の音色を変えること」です。
他にもいっぱいあるのですが、今回はこの話です。
コントラバスの仕事
「コントラバス!!聴こえない!!!」
と指揮の先生に怒鳴られるのはよく聞く話です。
もしそう言われたら、
「では単板で新品の弦と程よい弦高の楽器と、毛替えされた弓を用意してください。弦はオリジナルフラットクロームで。」
と言いましょう。
それは冗談ですが、私はコントラバスは基本的には単体で聴こえてこなくてもいいと思っています。
聴こえて欲しいと思う場面は
- おいしいピチカート
- 静かなとき
- 木管楽器主体のとき
の主に3場面です。
では、単体で聴こえてこなくてもいいということは、いなくてもいいのでは?と考えるかもしれませんが、そうではなく、コントラバスは他の低音楽器に混ざりにいって低音楽器群の音色(サウンド)を変えるためにいると思っています。
音色を変えるとは
例えば二分音符や全音符等で全体で和音を聴かせるような時には、テューバはテューバで低音の役割を果たすためにしっかり吹くと思いますが、テューバやユーフォ、トロンボーンあたりに頑張られるとファンファーレのような金管感が強くなってしまう場合があります。
そんな時に(そうでなくても)、コントラバスが響きのあるしっかりした音で弦を擦るブンブン、ゴリゴリ、ジリジリ、ジョリジョリ、ザラザラとした音を出して混ざりにいくと、金管感が和らぎ音色が変わるのです。
なので私は、
『テューバさん、バスクラ・バリサクさん、全体を支えるのは任せるし目立っちゃっていいから、ちょっと混ぜて〜!いい感じになるから〜〜!!』
というくらいの、決して対等ではなく他の低音楽器に低音としての役割は任せきって弾いています。
そうするととても気楽です。そして気楽になると余計な力が抜けのびのび弾けて、結果いい音が鳴るのです。
(任せるといっても手を抜いてはいけません。必要以上に頑張らないというニュアンスです)
合奏の時に単体で「コントラバス聴こえてて良いね〜」を目指すのではなく、「低音良いサウンドしてるね〜」が最高の褒め言葉だと思います。
それが分からずただ聴こえないからと怒られたとしたら気にしないでください。
耳の良い人や審査員の方にはちゃんと伝わっています。
マイナスイオン
中学生などまだ音楽経験が浅い子には、
「コントラバスはマイナスイオンだと思ってください。」
という言い方をする時もあります。
『なんかよく分からないけどあるといい』
もしくは冒頭のうどんのくだりとか。
吹奏楽におけるコントラバスは、そういう役割だと“私は”思っています。
ただし、前半であげたおいしいピチカートや静かな時など欲されていることを察知して、その時は5割増で頑張らないといけません。
その話は次回に。