タンゴの世界では「俺の楽団はあの曲をめっちゃカッコよくアレンジしたぜー」というように各楽団オリジナル・アレンジで勝負(?)するという面があります。
アレンジを楽しむ
例えば、タンゴといえば世界中で有名なラ・クンパルシータ(La Cumparsita)は、YouTubeで検索しても色んなアレンジがでてきて『どれが元祖?』『どれが正しいの?』となってしまいます。
タンゴの曲は古典と現代に分かれるのですが、古典の名曲ほど色んな楽団がアレンジをしています。
ライブで日本だと、
「それではオリジナル・アレンジでラ・クンパルシータを演奏します。」
と言ったり、
「ダリエンソ(ピアノのマエストロ)・スタイル(アレンジ)でラ・クンパルシータを演奏します。」
とMCで言ったりプログラムに書いてたりします。
なので
『今日聴いたあの曲良かったな~YouTubeにあるかな~…』
と検索をはじめても、誰のアレンジだったかを知っておかないとなかなかたどり着けなかったりします。
でも検索をしていると、
『あれ、なんか違うなぁ…でもこのアレンジも良いなぁ』
と、新たな発見があったりしてそれも楽しいところの1つです。
El Choclo で実例
ラ・クンパルシータの次くらいに有名なエル・チョクロ(El Choclo)を例にいくつかYoutubeから持ってきました。
最初の数十秒でも違いがありますので、ぜひ聴き比べてみてください。
まずはわりとシンプルなOrquesta Tipica Victorのエル・チョクロから↓
テンポは一定でメロディーもわかりやすいですね。
次にJuan D’arienzo楽団のエル・チョクロ↓
一音一音に鋭さ・勢いがあります(ダリエンソ楽団の特徴です)。そしてメロディーの合いの手としてピアノが良い仕事しています。
続いては現代の楽団からEl Arranqueのエル・チョクロ↓
ワクワクする感じの前奏がついてます。
バンドネオンの音数も増え、アレンジも複雑になってきています。
この辺りから最後まで聴いてみようと思ってきたのではないでしょうか?笑
ちなみにこの楽団はイグナシオ・バルチャウスキー(Ignacio Varchausky)というコントラバスの方がリーダーなので、CDを聴くとコントラバスの音がよく聞こえるのでベーシストにはおすすめです。
では最後にTrio Lavallén/Estigarribia/Cabarcos のエル・チョクロ↓
オシャンティーになってきました!
近年ではオシャレなコード進行を使ったりして、でもメロディーは崩しすぎない、印象に残るアレンジが良いようです。
このトリオはピアノのパブロ・エスティガリビア(Pablo Estigarribia)のアレンジで、ピアノの腕もアレンジも素晴らしく、タンゴに興味のあるピアニストにはいつもおすすめしています。
このトリオのコントラバスは私の師匠の一人であるオラシオ・カバルコスです。
弾いている右腕が美しく、タンゴを弾く時は常にイメージを頭においています。
まずは好きな曲探しから
いかがでしたでしょうか。
エル・チョクロを例にしてみましたが、他にも多くの古典の曲がカッコよくアレンジされて今の時代まで進化し続けています。
まずお気に入りの曲をみつけたら、Youtubeで検索してみてください。
眠れない夜のはじまりです。笑
まずは楽しみ方の1つとして、1曲の同じ曲でも色んなアレンジが楽しめますよ、というお話でした。
ちなみに、最初に『どれが元祖?どれが正しいの?』ということを書きましたが、大体の作曲者はピアニストであったりバンドネオン奏者であったりするので、その作曲者自身が所属している楽団の演奏が元祖ということになると思います。
おまけ
ピアソラが晩年に結成した6重奏の時のピアニスト、ヘラルド・ガンディーニ(Gerardo Gandini)のエル・チョクロ↓
前半はクイズができそうなくらいメロディーが崩され、いかにも現代的な感じになっています。
タンゴつうの頑固おじさんが聴いたら帰っちゃいそうですね(笑)
ちなみにちなみに、エル・チョクロはトウモロコシという意味です。